入居申込があるのに契約が決まらない?オーナーが知るべき審査のリアル

1. はじめに

繁忙期になると「申し込みが入っています!」と管理会社から報告を受けることも増えます。しかし、申し込みの数が多ければ安心というわけではありません。実際には、その中に“本当に契約まで至る申し込み”と、“ただの仮申し込み”が混ざっています。オーナーが一喜一憂せず、冷静に状況を判断できるよう、入居審査のリアルを解説します。

2. 申し込みが多い=良いことではない理由

2-1. テキトーな申し込みの実態

賃貸仲介会社の一部ではありますが、「とりあえず申し込みを入れておく」ことがあるとご存じでしょうか?

特に繁忙期は、複数の物件に申し込みを入れておき、最終的に条件が良い物件に決める入居者も少なくありません。そのため、管理会社に届く申し込みの中には、

  • 本気で借りるつもりのない申し込み
  • 申し込みを入れておいてから条件交渉する申し込み
  • 他の物件と天秤にかけられている申し込み

が多く含まれています。

こうした申し込みにより、オーナーがぬか喜びしてしまうこともあります。そのため、単に「申し込みが入った!」と安心するのではなく、質を見極めることが重要です。

3. 本当に良い入居者を見極めるには? 管理会社の種類から考える

3-1. PM型管理会社と一般的な管理会社の違い

管理会社には大きく分けて2種類あります。

  1. PM型管理会社(プロパティマネジメント型)
  2. 仲介店舗を持つ管理会社(一般的な管理会社)

この違いを知っておくと、管理会社の役割が明確になります。

PM型管理会社一般的な管理会社
仲介店舗持たない持っている
目的オーナーの利益最優先仲介店舗の売上も考慮
申し込みの質厳選した入居者を選定数を優先し、とりあえず申し込みを増やす傾向
囲い込みなし可能性あり
表1「PM型管理会社と一般的な管理会社の違い」

3-2. PM型管理会社の強み

PM型管理会社は、オーナーの代理人として動くことを強みとしています。

  • 仲介店舗を持たないので、自社の仲介実績を気にする必要がない
  • 空室から管理料が入らないため、オーナーの利益を優先せざるを得ない
  • 囲い込みをするインセンティブがないため、幅広い仲介会社と連携できる
  • 入居者の質をしっかり審査し、長期的に安定した賃貸経営をサポートする

一方、一般的な管理会社は入居者とオーナーの間に入り、仲介店舗の実績を重視するケースが多いです。そのため、「とりあえず申し込みを取って数を増やす」ことが優先される場合があります。

PM型管理会社を活用することで、「本当に契約まで至る申し込みか?」を冷静に見極め、オーナーの利益を最優先にした管理を実現できます。

4. 入居者を見極めるためにオーナーができること

オーナーとしても、申し込み数に惑わされず、管理会社と協力して良い入居者を選ぶ視点が大切です。具体的には、

  • 申し込み時の審査基準を管理会社と共有する
  • 入居審査のプロセスを確認する(本人確認の方法、信用調査、収入証明、連帯保証人の有無など)
  • 募集条件を定期的に見直す(外国籍の方や高齢者のひとり入居などの受け入れ基準)
  • 管理会社のアドバイスを受け入れる姿勢を持つ

外国籍の方や高齢者のひとり入居などは、一般的にリスクと考えられがちですが、リスクを軽減する方法は多くあります。保証会社の活用や管理体制の強化により、安心して受け入れられるケースもあります。

一方で、管理会社が「対応が面倒だから」と無条件にNGにしていることもあり、空室をなくしたいオーナーの意向と異なる対応をしている可能性もあります。

物件周辺の環境や間取りによっても適切な対応が異なります。そのため、一律な対応をしている管理会社ではなく、オーナーが納得できる提案をしてくれる管理会社を選ぶようにしましょう。

また、入居者の質を確保するには、

  • 保証会社の利用(連帯保証人だけでなく、保証会社を活用するメリット)
  • 火災保険加入のチェック(適切な保険に入っているかどうかも入居者の質の指標)

などもポイントになります。空室にしているよりは良いですが、何かあったときでは遅いからこそ、リスク軽減を考えた提案ができる管理会社を選ぶことが大切です。

5. まとめ

申し込み数が多いことは、一般的には喜ばしいことですが、入居者や契約状況の質を確保して、良い入居者に長く住んでもらうことも今後の賃貸管理には重要な視点です。

入居者・契約の内容をしっかり見極めることが大切です。特に繁忙期は申し込みが増えますが、

  • 「とりあえずの申し込み」があると知る
  • PM型管理会社を活用して、物件利益を最優先に考える管理を実現する
  • 入居審査の基準を明確にし、良い入居者を迎えるための条件を管理会社と相談する

オーナーにとって本当に有益な管理をしてくれる会社と付き合うことで、物件の安定経営につながります。

この記事を参考に、今の管理会社は入居者の質やリスクについてどう考えているか、管理会社との付き合い方を見直してみてください。